議事録作成のコツとポイント:良い議事録を迅速に作るために必要なこと

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会議や打ち合わせの後には、議事録の作成が求められますが、そこでは、迅速性や正確性、簡潔さなどさまざまな要件が求められるため、一筋縄ではいきません。本稿では、そんな議事録作成のコツとポイントについて、一般的な考え方から会合の種類ごとの考え方に至るまでをまとめています。

  • 本稿の内容は、議事録を作成する際の一般的なエッセンスをまとめたものです。細かい点については、読者のみなさまご自身がアレンジすることをおすすめいたします。

議事録作成の意義・目的

議事録とは、様々な会議や打ち合わせの内容、経過や結論などを記録してまとめ、それを周囲に伝えるための文書のことをいいます。議事録の用途は、社内会議でのメモ書きや社内会議・研修などの備忘録から、会議報告書、株主総会、理事会、取締役会の正式な記録に至るまで、目的や重大性の軽重も様々です。世の中の多くの会議や打ち合わせでは、終了後、議事録が作成されますが、議事録の作成には以下のような意義や目的、機能があるとされています。

会議の備忘録

議事録には、会議の記録としての意味、つまり、いつ何が決定したのか、経緯も含めて記録しておくことにより、後日さかのぼってエビデンスとして確認することができます。人は、自分の発言であっても、時間の経過とともに記憶が曖昧になっていくので、記録が残っていないと「言った・言わない」問題が起こる可能性がありますが、そうしたトラブルの防止にも効果的です。

情報の共有

会議に参加しなかった関係者に決定事項を伝え、情報共有をすることは議事録作成の大きな目的のひとつです。決定事項だけを伝えると、なぜそういう結論になったのかがわからず、正確に共有できないこともあります。この点、議事録を通じて、会議の内容やプロジェクトの進捗状況、課題などを把握できれば、その後の業務を円滑に進めることができます。

また、議事録がアーカイブ化されていくと、プロジェクトの経緯を理解しやすくなるとも考えられます。例えば、途中からプロジェクトに参加したメンバーにこれまでの経緯を説明する際、議事録を参照してもらうことで、より詳細に理解してもらいやすくなるでしょう。

認識の齟齬がないかの確認

その場ではお互いに納得しているようでも、言葉だけでは意図した内容が伝わっていなかったり、合意の範疇が異なっていたり、互いの認識が異なる場合もあります。そのズレを放置していると、後々、トラブルや思わぬ停滞、作業効率の低下につながることもあるため、文書のかたちで互いの認識を確認しておく必要があります。

決定事項の明確化・タスクの確認

次の会議までに決めなくてはいけない事項や確認事項、資料作成などの作業がある場合、会議後に「誰に確認してもらうか」、「誰が担当するか」、「次回までに誰が何をするか」を明確にします。こうしたアクションプランをいつでも確認できる状態にしておくことで、作業の抜け漏れ、認識のズレによる修正や手戻りなどを予防することができます。

責任の所在の明確化

議事録が作成される会議は、先にも述べたように、部内の進捗報告会から理事会、取締役会、各種総会までさまざまです。会議の主目的が組織としての意思決定である場合、決定に関与した人物には責任がともなうことがあります。例えば、最も重大なケースとして、新規事業に失敗し、会社に損失を与えてしまった会社役員の経営責任が問われ、訴訟に発展することもありますが、そうした場合に、議事録は証拠としての役割を果たします。つまり、意思決定のプロセスに問題はなかったか、監査役は責務に忠実に行動していたか、個々の役員はきちんと意見を述べ、善管注意義務を果たしていたかなど、組織としての責任、個人としての責任が追及される際の検証に用いられる可能性があるということです。

この点、以下のように、法律によって、議事録の作成が義務づけられている場合があります。

会社法
創立総会(第81条)、株主総会(第318条)、取締役会(第369条)、監査役会(第393条)、監査等委員会(第399条の10)、指名委員会等(第412条)、債権者集会(第561条)、社債権者集会(第731条)
一般社団法人・一般財団法人法
社員総会(第57条)、理事会(第95条)、評議員会(第193条)、清算人会(第223条)
区分所有法
集会(第42条)、復旧決議の集会(第61条)、建替え決議の集会(第62条)
都市再開発法
総会及び総代会の会議の議事録(規則第38条)→条文中に議事録の作成義務に関する規定はないが、「事務所備付け簿書」として備える義務がある

議事録の記載事項

議事録は非常に多くの場面で作成されるものであるため、インターネットを検索すると、多種多様なフォーマットやテンプレートを入手することができます。また、社内に過去の議事録がある場合が多く、それを参考にすれば、「議事録に何を書けばいいのか分からない」ということはないでしょう。ただ、ここでは、そうした「基本」を改めておさらいしてみたいと思います。

先ほど法律による議事録の作成義務がある場合があるという話をしましたが、単に作成することが義務づけられているだけでなく、最低限の記載事項についても、例えば、以下のような規定があります。

会社法施行規則
創立総会(第16条)、株主総会(第72条)、取締役会(第101条)、監査役会(第110条の3)、監査等委員会(第111条の4)、指名委員会等(第143条)、債権者集会(第153条)、社債権者集会(第177条)
一般社団法人・一般財団法人法施行規則
社員総会(第11条)、理事会(第15条)、評議員会(第60条)、清算人会(第68条)

これらの規定で言及されている項目は、「会議が開催された日時及び場所」、「出席者・欠席者」、「議事の経過の要領及びその結果」など、一般的な議事録と変わりはありません。ただ、先ほど述べた「訴訟時の証拠」、あるいは「登記の手続き上必要な情報」といった目的があるため、「創立総会の決議があったものとみなされた日」、「意見又は発言の内容の概要」といった項目が盛り込まれています。このように、議事録は会議の目的によって、必要な情報とそうでない情報があるので、個々のケースにおいて取捨選択する必要がありますが、一般的な記載事項を列挙していくと次のようになります。

必須項目(基本項目)

  • 会議名
  • 日時・場所
  • 出席者・欠席者(所属・役職)
  • 議事録の作成者
  • 議題・協議内容
  • 議事の経過の要領及びその結果

任意項目

出席者・欠席者に関する事項

  • 司会者・議長
  • 会議の招集者
  • 途中出席者・途中退席者
  • 各参加者の参加方法(Web会議など)
  • 定足数を満たしている旨
  • 議事の進行に支障がないことを確認した旨(Web参加者の通信状況など)

議事の経過の要領及びその結果に関する事項

  • 配布資料リスト
  • 報告、発表、提案、検討事項の要旨
  • 発言の要旨(質疑応答、賛成意見・反対意見など)
  • 採決の結果(賛成、反対、無効の票数)
  • 決定、または否決の理由
  • 決定事項(合意事項、承認された提案、採択された方針など)

今後の予定に関する事項

  • 今後のアクションプランとその担当者・日程
  • 次回までの検討事項・用意すべき事項、持ち越し事項
  • 次回会議の予定(日時・場所、議題など)

議事録の承認や配布に関する事項

  • 承認・確認フロー
  • 内容の確認、加筆修正、承認などをした者とその日付
  • 議事録の配布先
  • 議事録署名人

その他

  • 懸案事項、特記事項、備考

議事録作成のポイント

前章で、議事録の記載事項を列挙しましたが、必要な情報が含まれているものを作りさえすれば、それで万事よしというわけでもありません。先に述べたようなさまざまな目的があることから、一般的に、①会議終了後、できる限り早く作成する、②簡潔で分かりやすい文書とする、③事実を正確に記録するといった要件が求められます。

ただ、議事録を作成するうえで必要な要件は、個々の会議ごとに(=目的に応じて)異なり、絶対的な決まりはありません。そのため、ここでは、上記のような点を押さえた「良い議事録」を「素早く」作成するうえでの一般的なポイントを紹介し、後で、具体的な会議の種類ごとに、必要な要件について、より詳細に考察したいと思います。

記法にルールを設ける

まず基本として、文章や情報の記法、使用するフォントなどを予め決めておきましょう。規則的で統一感のある文章の方が読みやすいからです。ただ、この点、同じプロジェクトでも違う人が議事録を作る場合がしばしばあり、人によって好みやこだわりもさまざまです。そのため、絶対に死守すべき金科玉条を無理に設ける必要はなく、基本的にそれぞれが文書内で統一されていれば問題ありません。

具体的な記法の項目として、例えば、以下のようなものが挙げられます。

文体

同じ情報を伝える場合、それを表現するのに要する文字数が少ないほど、「簡潔」だと言えるでしょう。この点、「話し言葉」よりも「書き言葉」の方が簡潔であり、「ですます調」よりも「だ・である調」の方が簡潔でしょう。例えば、「〇〇に決定いたします」ではなく、「〇〇に決定」とした方が、黙読していても頭に入ってきやすくなります。

日時の表記

行政(中央省庁、地方自治体など)の文書では、元号表記(昭和、平成、令和など)が基本ですが、一般的には西暦の方が認識しやすいことが多いと思われます(例えば、何年前・何年後の計算をする場合など)。行政の職員が作る議事録であれば、これまでの慣例通り元号表記であっていいと思いますが、それ以外の場合であれば、西暦表記で問題ないと考えられます。

時間の表記については、「12時間表記」(午後1時など)と「24時間表記」(13時など)があります。この点については、例えば、午前・午後の修正ミス(前回のファイルをコピーして作った場合など)がなかったり、日常のやり取りでも齟齬が少ないといったことがあるので、24時間表記の方が良いと思われます。

その他、桁数のゼロ埋め(例 2000年06月01日 09:05)や日付を記載する際の曜日の有無なども人によって違いがあると思われます。

事実をありのままに記載する

先に述べたように、議事録は、情報伝達の手段であるほか、時に証拠としてとしての役割を果たすことがあります。何らかの決議があった際の、出席者・欠席者、賛成票・反対票の票数などの基本事項はもちろんのこと、会議の主旨や議事録作成の目的に照らし、重要と思われることは、ありのままを正確に記載することが必要です。「実際にはあった重要な発言をあえて記載しない」、「実際にはなかった発言を捏造する」といったことが厳禁であることは言を俟ちませんが、意見・発言を要約する際には、記録者の意見や主観、感情が混入しないように注意しながら、可能な限り、ニュアンスを変えずに記載する必要があります。

重要でない情報は省略する

法定の議事録においても、議事の経過の要領が求められるのみであり、発言や起こった事象を一言一句記録する必要はありません(インタビューなどではそうした「発言録」が必要になることもありますが)。むしろ、不要な情報を入れすぎることで本来伝えなければいけない情報が埋もれてしまう可能性もあります。会議の目的と成果に焦点を当て、例えば、冒頭の挨拶などは省き、長い話は要点して書くようにしましょう。すべてを会話通りに残す必要はなく、臨機応変に箇条書きを使うことでより読みやすい文章に仕上がります。

また、会議内で挙がった意見と決定事項を混在していると、わかりにくい議事録になりがちです。例えば「今期中にあと 25 件は厳しいと思うので、目標は 20 件でどうでしょうか?」といった意見があり、目標とする契約件数が 20 件に決定したとします。この場合、決定事項である「目標件数は 20 件」のみ記載し、話し合いの過程で挙がった意見や感想については省いたほうがより簡潔になります。

一般的に、記載しなくてもよいと思われるものには以下のようなものがあります。

会議の目的に照らし、重要ではない発言
挨拶、司会進行の言葉
自己紹介、事業紹介
過度に技術的な詳細
個人的な批判、非建設的なコメント
結論に大きな影響を与えなかった発言
雑談、その他、議題とは関係がない話
未確定情報
噂、個人的な構想
作成途中の「案」の内容
個別性が高いもの
個々の事例の詳細
機密情報
個人情報
企業の営業情報、未公表情報

項目ごとに話を整理する

会議は、基本的に次第や事前に決めた流れに沿って進み、会議に参加している人は議題・話題ごとの区切りをつけることができます。しかし、文章で表現する場合には、明確な区切りがないと読みにくい文章になってしまいます。このような場合、話題・議題ごとに見出しをつけ、議題のなかでも話のまとまり単位で小見出しをつけるなどの工夫ができます。

ただ、実際の会議では、しばしば、前の話題に関する追加の発言があったり、話題や議題が前後したり、入り組んだりします。そのような場合、発言を単純に時系列に並べただけだと、話の大枠をつかみにくくなります。このような場合、発言の内容を精査し、同じテーマの発言は、適宜、1ヶ所にまとめましょう。

曖昧さをなくす

会議は口頭での会話によって、議事が進行していきます。会話の場合、主語・述語を省略したり、こそあど言葉(これ、それ、あれ、どれなどの指示代名詞)を用いたり、互いの共通認識や暗黙知に頼ったり、専門用語・業界用語を多用したりしても、コミュニケーションは成立します。しかし、文章でその内容を伝える際には、明確に表現されていないと正確に伝わりません。例えば、主語や述語を省いた状態で、「あれね」、「いいんじゃない?」、「それで行こう」といった発言が飛び交いますが、それらをそのまま記載しても、読み手は何を意味しているかが分かりません。文書での表現においては、可能な限り曖昧さをなくした、明確な表現が求められます。

この点、①5W2H、すなわち、Why(なぜ)、What(何を)、When(いつ)、Who(誰が)、Where(どこで)、How(どうやって)、How much(いくら)を明確にする、②発言の趣旨・ニュアンスを変えないように注意しつつ、主語や述語を補う、などの工夫をすることができます。

また、そのほかにも論理的な文章の書き方や思考法のフレームワークが多くあります。代表的なものとして、「FOCEP」、「CREC」、「PREP」、「空・雨・傘」、「ピラミッドストラクチャー」、「ロジックツリー」などを挙げることができます。これらのフレームワークを、5W1Hを意識して議事録の目的によって使い分けるとさらにわかりやすい議事録が作成できます。

事前準備をする

議事録の作成は、定型的な作業(基本情報の入力など)も多いため、テンプレートを作成するのが効率的で、会議前に基本情報(日時・場所、出席者・欠席者など)を入力することは容易にできるでしょう。会議内での発言については、会議が始まってからしか内容を把握することはできませんが、議事次第などが事前にわかっている場合は、予め準備することも可能になります。

例えば、会議の目的や情報の共有先などを整理しておくことができます。何か決めるべき会議であれば、結論のみを書けばいいですし、ブレーンストーミングが目的であれば、個々の意見やアイディアを記載する必要があります。社内で共有するのみであれば、ある程度の省略は許されますし、社外の関係者にも共有するのであれば、なるべく詳しく、明確に記載しなければなりません。決議事項や検討事項、それらが議論される順番が分かっていれば、何に注目して聞いていればいいか、当たりをつけることが可能です。

こうした準備ができていないと、話を聞きながら内容の重要性を判断したり、メモを取ったりしなければならなくなりますが、会議の後半になるにつれ、メモを取り切れなくなったり、集中力が切れてきたりするので、要点を押さえることが難しくなってしまいます。予め議事次第の内容をテンプレートに記入し、後は会議を聞きながら「必要項目を埋めていく作業」にまで落とし込むことが肝要です。

必要に応じて補足資料などを活用する

議事録を読めばすべてが伝わるというのが理想的ではありますが、文章だけ、限られた紙面だけでは表現しきれない部分もでてきます。また、参加者が説明や報告をする際に、資料に沿って説明するのが一般的でしょう。このような場合、説明資料リストの欄を設けておき、「資料①を参照」、「資料②の内容を説明」などとした方が、伝わりやすく、要領を記載する手間も省けるため、合理的です。報告事項が予めレジュメに箇条書きでまとめられているのであれば、それをそのまま転記することもできます。

また、ICレコーダーなどで会議を録音すること、あるいは、Web会議では、会議の様子を録画することも可能です。取締役会や株主総会など、「証拠機能」が求められる場合においては、議事録だけで完結させる必要はなく、録画・録音データを証拠とすることも認められているようです(参考文献2 p34, p38)。議事録は端的な情報共有のツール、録画・録音データは正確な証拠能力を持つツールとして位置づけ、適切に使い分けていきましょう。

会議の参加者全員で作り上げる

議事録の作成担当者が完璧なものを作るのが理想ではありますが、現実的にはそうはいきません。聞き漏らした部分、内容がよく分からなかった部分もあるでしょうし、内容の要約を行う際に、残しすぎたり、省略しすぎたり、自分としては重要でないと思った発言も「残すべき」と判断する人もいるでしょう。そうした難しさがあるので、「原案からして完璧なものを作れなくともよい」と割り切るのも一案です。他の参加者に添削や加筆・修正してもらうことで、みんなが納得のいく議事録を作れればそれで問題ありません。

議事録作成のテクニック

議事録作成を行うにあたり、会議中にメモを取り、それを清書するというかたちで作成できれば、それが最も迅速な作成方法と言えるでしょう。メモの取り方には、例えば、次のようなテクニックがあります。

素早く書くためのルールを決める

メモ書きは自分自身のものであり、誰かに見せることはないので、誤字脱字があっても気にする必要はありません。漢字を忘れたり、書くのに時問がかかりそうなときはかな書きにします。

記号や略語を使うのも有効です。たとえば、「田中さん」の発言を「タ」と短縮して記述したり、「その結果」の代わりに「→」を使ったりします。「◎」「〇」「△」「×」「※」などの記号の自己流の使い方を決めておいて、それらの記号を活用するのも効果的です。

ボイスレコーダーやspeech to textツールを補助的に使う

議論が白熱した場合や長時間にわたる場合、メモを取り切れなかったり、重要な発言を聞き逃してしまうこともあります。また、会議に参加していた人にメモを取る余裕がなかったり、会議に参加していない人に議事録を作ってもらわなければならないこともあります。そうした場合に備えて、会議の録音・録画をすることは有効です。

録音・録画データを再生しながらメモを取るほか、近年では、speech to text技術を用いた議事録作成の補助ツール(Nottaなど)も利用できるようになっています。こうした補助ツールには、AIによる自動議事録作成機能やリアルタイムの文字起こし機能があるので、活用できる機能は活用し、可能な限り、作業負担の軽減や省力化を図っていきましょう。

会合パターンの整理

以上に述べてきたのは、議事録を作成するうえでの、一般論です。しかし、実際に議事録を作成することはそう簡単なことではありません。むしろ、「議事の経過の要領」とはいうものの、どの発言が目的に照らして重要な発言なのか、何を残し、何を省略していいのか、そうした取捨選択、判断をすることこそ、最も神経を使う作業と言えます。

実際、作業していると、メモした発言の重要度を判断するのが大変なので、「とりあえず全部載せてしまおう」と判断してしまいがちです。しかし、そうなると「発言録」に近いものとなってしまい、作業の負担や所要時間は減らないという事態に陥ります。特にコンサルタントなどの業種は、会議や打ち合わせの数がかさむ傾向にあるので、議事録を作りきれなくなったり、本来は副次的な業務のために残業せざるを得ないという本末転倒な事態になったりします。その意味で、どこかで合理化する必要があるでしょう。

会合の種類と目的

この点、会合の性質ごとに目的が異なるため、一般的な正解はありませんが、会合のパターンはそう多くはないため、パターンごとの一般的な方針を立てておくことはできるでしょう。

例えば、筆者には、市街地再開発事業のコンサルタントとしての経験がありますが、その業務の中で行われる会合のパターンと目的を以下のように整理することができます(分類についてはあくまでも単純化した理念型で、実際には明確な線引きはないかもしれませんが)。

表 1 会合のパターンと目的
会合の種類 目的
総会 予め用意された議題について議論し、集団としての意思決定をする
会議 事業の進捗状況の報告、課題の共有とその対応策についての議論、アクションプランの設定などを行う
打ち合わせ 既に決定されたアクションプランの進捗状況や今後の行動方針の確認、擦り合わせをする
面談 相手方の疑問点、懸念点、要望事項、意見などを抽出する、専門家としてアドバイスする
協議 お互いに意見交換し、問題解決や事業推進にあたっての課題について整理する、交渉し妥結点を探る
ヒアリング 実施者の疑問点などについて質問し、相手方の見解、意見、所感などを明らかにする
勉強会 実施者が専門家として、権利者などに対し、専門的な知見・知識を教授する
シンポジウム 周辺地域などでの取り組みや事例などについての知見を得る、周辺地区と連携するうえで重要なポイントを整理する

会合の流れ

こうした各種会合は、一般的には、以下のような流れで進んでいきます。

  1. 報告、説明、発表、講義
  2. 討論・質疑応答
  3. 採決・総括

このうち、①報告・説明などの部分については、事前に用意した資料に沿って内容が説明されることが多く、資料を参照すれば事足りる場合、あるいは、①の部分の内容は、情報の共有予定者にとってそこまで重要ではない場合も多々あります。こうしたことから、基本的に「資料○○に沿って説明」程度の記載に留めて内容は省略し、会合の目的に応じて、適宜、要点を箇条書きなどで記載すればいいでしょう。

これに対し、②、③の部分については、その場で初めて内容が分かる類のものであり、多くの場合、その内容が重要となります。したがって、集中して聞き取る必要があります。

会合種別ごとの考え方

以下、会合の類型ごとにポイントをまとめていきます。ここでの記述は筆者個人の特殊な例かもしれませんが、読者のみなさんも、それぞれの実態に応じて、こうした「会合の本質」について整理することは有用だと思います。

総会

想定される参加者

  • 組合員

想定される議事録の共有先

  • 組合員

会合の目的

  • 予め用意された議題について議論し、集団としての意思決定をする

典型的な進行の流れ

  1. 議長の指名
  2. 開会宣言
  3. 各種報告、議案の説明
  4. 質疑応答・討論
  5. 採決
  6. 閉会宣言

議事録を作成するうえでのポイント

  • 法的にも重要な文書となり得るため、会社法などの法令に準拠した、正式な文書とすることが望ましい。
  • 主な記載事項について、要点を押さえて簡潔に記載する必要がある。
  • 必要に応じて添付資料を活用するなど、合理化・省力化に努める。
  • 議事の様子を録音・録画するなどして、証拠能力を担保しておくことが望ましい。

議事録の主な記載事項

  • 会議名
  • 日時・場所
  • 出席者・欠席者(所属・役職)
  • 途中出席者・途中退席者
  • 各参加者の参加方法(Web会議など)
  • 議事録の作成者
  • 議事の進行に支障がないことを確認した旨(Web参加者の通信状況など)
  • 定足数を満たしている旨
  • 議事の経過の要領及びその結果
  • 報告、発表、提案、検討事項の要旨
  • 発言の要旨(質疑応答、賛成意見・反対意見など)
  • 採決の結果(賛成、反対、無効の票数)
  • 議事録署名人

会議

想定される参加者

  • 組合理事
  • 事業協力者・参加組合員

具体的な会議スタイル

  • 理事会・三役会
  • 事業者会議

想定される議事録の共有先

  • コーディネート業務の発注者(組合、市)
  • 事業協力者・参加組合員

会合の目的

  • 事業の進捗状況の報告や課題の共有をする
  • 課題に対する対応策についての議論、アクションプランの設定などを行う

典型的な進行の流れ

  1. 事業の進捗報告、課題・問題点の説明
  2. 質疑応答・議論

議事録を作成するうえでのポイント

  • 理事会では、何らかの意思決定を行うために決を採ることがある。
  • 進捗報告や課題点の説明パートは、「資料○○に沿って説明」と記載し、要点を箇条書きなどで記載する。
  • 事前に報告のポイントや要点をレジュメにまとめておくなどの工夫が可能。
  • アクションプランにつながる発言や課題解決に向けた意見などが特に重要なポイント。

議事録の主な記載事項

  • 基本項目
  • 配布資料リスト
  • 報告の要旨
  • 発言の要旨(質疑応答、賛成意見・反対意見など)
  • 決定事項(合意事項、承認された提案、採択された方針など)
  • 今後のアクションプラン
  • 次回までの検討事項・用意すべき事項、持ち越し事項
  • 次回会議の予定(日時・場所、議題など)

打ち合わせ

想定される参加者

  • 準備組合の事務局
  • 事業協力者

想定される議事録の共有先

  • 会合の参加者(欠席者)

会合の目的

  • 既に決定されたアクションプランの進捗状況や今後の行動方針の確認、擦り合わせをする

典型的な進行の流れ

  1. 現状報告、アクションプランの進捗報告、今後の予定の確認

議事録を作成するうえでのポイント

  • 「会議」の簡易版といった位置づけであり、どちらかと言えば、実務者同士が水面下で行うものとしての意味合いが強い。
  • 決定権者にいちいち報告するまでもないような内容の場合、議事録を作成してなくてもよいと思われる。
  • 予定の変更、新たなアクションプランの設定などがあれば、記載する。

面談

想定される参加者

  • 権利者(賛成・中立)
  • デベロッパー

想定される議事録の共有先

  • コーディネート業務の発注者(組合、市)

会合の目的

  • 相手方の疑問点、懸念点、要望事項、意見などを抽出する
  • 上記のような事項に対し、専門家としてのアドバイスや担当者としての情報提供をする

典型的な進行の流れ

  1. 面談の主旨説明や事業の現状報告
  2. 質疑応答・意見抽出

議事録を作成するうえでのポイント

  • 基本的に事業の進展に向けて、同じ方向を向いている主体同士の意思疎通といえる。
  • 実施結果は、場合により、理事会などでの報告事項となる。
  • 現状報告については、複数人(複数社)に対し、ほぼ共通した資料に沿って、同じ説明をすることが多い。
  • 報告内容は議事録の共有予定者の主たる関心事というわけではないと思われる。
  • 上記のような点から、説明や報告の内容については、「資料○に沿って説明」などと省略しても問題ないと思われる。
  • 質疑応答・意見抽出のパートが肝なので集中する。
  • 他の会合と比べて、雑談が挟まることも多いが、そうした事業の進展に関係がない情報はカットしてよい。
  • デベロッパーとの面談は非公式なものもあるが、その場合は議事録を作成しなくてよい。

ヒアリング

想定される参加者

  • デベロッパー
  • 行政機関・公的機関(国土交通省、都道府県、市町村、警察)

想定される議事録の共有先

  • コーディネート業務の発注者(組合、市)

会合の目的

  • 実施者の疑問点などについて質問し、相手方の見解、意見、所感などを明らかにする
  • 行政機関・公的機関の場合、補助金の申請や規制、その他法令上の制限などが主なテーマとなる
  • デベロッパーの場合、事業参画意向や参画条件などが主なテーマとなる
  • 総じて、事業を進展させるうえでの課題や障害の明確化とその解消が最終的な目的

典型的な進行の流れ

  1. 質問事項、相談事項に関する説明
  2. 回答

議事録を作成するうえでのポイント

  • 実施結果は理事会などでの報告事項となる。
  • 質問事項、相談事項は予め決まっているので、それをそのまま記載すればよい。
  • 回答の内容は重要なので、結論や理由を集中してメモする。

協議

想定される参加者

  • 行政機関(都道府県、市)
  • 権利者(反対)

想定される議事録の共有先

  • 組合

会合の目的

  • お互いに意見交換し、問題解決や事業推進にあたっての課題について整理する、交渉し妥結点を探る
  • 利害や目的、思惑、立場が異なる主体同士による交渉の意味合いが強い

典型的な進行の流れ

  1. 会合の主旨説明、事業の現状報告、課題点・問題点の説明
  2. 質疑応答、意見交換、交渉

議事録を作成するうえでのポイント

  • 現状報告については、あまり重要ではないため、内容をバッサリと省略してもいいと思われる。
  • いっぽう、問題となっている論点については重要な情報なので、箇条書きなどで要点を記載する。
  • 意見交換の段階では、課題を解決するうえでの懸念点、条件、要求事項が特に重要である。

勉強会

想定される参加者

  • 組合、権利者団体

想定される議事録の共有先

  • コーディネート業務の発注者(組合、権利者団体、市)

会合の目的

  • 実施者が専門家として、権利者などに対し、専門的な知見・知識を教授する

典型的な進行の流れ

  1. 講義
  2. 質疑応答

議事録を作成するうえでのポイント

  • 基本的に、資料に沿って講義内容が説明される。
  • 講義内容を議事録上で文章として表現しきるのは難しい。
  • 基本的に、各回で前回の内容の復習があり、重要なポイントは回を跨いで何度も繰り返し強調されるため、内容の重複がある場合が多い。
  • 議事録に「読めば当日の説明内容を完全に理解できる」というような機能を担わせるのは適していない。
  • 上記の点から、説明内容は基本的に省略してしまってもよいと思われる(記載するとしても、重要なポイントを箇条書きで何点か記載する程度でよいだろう)。
  • 何度も同じ質問が出てくることを防止する忘備録としての機能が考えられるので、質疑応答がある場合は、質問・回答の要旨を記載する。
  • 質疑応答がなかった場合は、「参加者からの質問などはなかった」と記載する。
  • その場では回答できなかったこと、参加者からの要望、次回までの宿題などがあったら、それを記載する。

シンポジウム

想定される議事録の共有先

  • コーディネート業務の発注者(組合、市)

会合の目的

  • 周辺地域などでの取り組みや事例などについての知見を得る、周辺地区と連携するうえで重要なポイントを整理する
  • 地域の人や団体同士の交流、意見交換、地域全体の将来像を考える

典型的な進行の流れ

  1. 発表、事例紹介、講演
  2. 質疑応答・パネルディスカッション
  3. 総括

議事録を作成するうえでのポイント

  • 発表テーマは、発表者の取り組みや事例紹介など個別性が高いテーマであることが多い。
  • パネルディスカッションでは、基本的にテーマに沿って、全体的・総合的な視点からコメントされていく。
  • 対象地区での事業推進を考えるヒントにはなり得るが、発表・パネルディスカッションの部分については、詳細を記載する必要性は低いと思われる。
  • 「総括」とはすなわち、「全体を見渡して、まとめをすること」なので、総括部分の内容がすなわち、シンポジウムの要点にほかならない。

参考文献

  1. 永山 嘉昭 著. 報告書・レポート・議事録が面白いほど書ける本. KADOKAWA, 2017, 175p.
  2. 松井 秀樹 著, 森・濱田松本法律事務所 編. 会社議事録の作り方:株主総会・取締役会・監査役会・委員会. 第3版, 中央経済社, 2022, 465p.
  3. 議事録とは?議事録の目的や書き方における10のコツをご紹介!. RICOH. 2024-01-31. https://www.ricoh.co.jp/service/toruno/column/minutes-writing#: \sim :text=%E8%AD%B0%E4%BA%8B%E9%8C%B2%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E4%BC%9A%E8%AD%B0,%E4%BD%BF%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82.
  4. 議事録の書き方・例文集~上司も認める議事録の書き方をマスターしよう!~. TKP 貸会議室ネット. https://www.kashikaigishitsu.net/contents/001/page1.html.
  5. 議事録とは? 議事録の意味と目的を知って書き方のコツをつかもう. TKP 貸会議室ネット. https://www.kashikaigishitsu.net/contents/003/page1.html.
  6. 議事録を上手に取るコツは? ~認識の齟齬なく伝わる情報整理された議事録の取り方・書き方~. TKP 貸会議室ネット. https://www.kashikaigishitsu.net/contents/006/page1.html.
  7. 水井 歩. わかりやすい議事録の書き方とは?フォーマット・テンプレートとコツを紹介. PRTIMES MAGAZINE. 2023-10-19. https://prtimes.jp/magazine/minutes/.
  8. 会議に議事録は必要? 議事録の目的や書き方などについて解説. slack. 2023-12-21. https://slack.com/intl/ja-jp/blog/collaboration/why-do-we-need-minutes-of-meetings.
  9. 議事録にはコツがある!議事録の基本. FUKURACIA. https://www.fukuracia.jp/report/blog/1569.html.
  10. 今さら聞けない!議事録の書き方とポイントをおさらいしよう. NotePM. 2024-01-04. https://notepm.jp/blog/1954.

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大学時代に読書の面白さに気づいて以来、読書や勉強を通じて、興味をもったことや新しいことを学ぶことが生きる原動力。そんな人間が、その時々に学んだことを備忘録兼人生の軌跡として記録しているブログです。

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